「Omoi」はこうして生まれた

金属製スピーカー「Omoi」・・・おもいのはなし

大阪府枚方市で、小さな町工場を経営している私も 50才を過ぎ、今から約20~30年前の オーディオブームを経験した世代の一人です。今日、社会で活躍する中心世代でも有り最近では、その世代当時の音楽がリメイク盤や再販されたり、テレビやラジオから耳にする機会がふえ、当時を懐かしみながら明日への活力を養うエネルギーにされている方も多いのではないでしょうか。

しかしながら、現在はオーディオ全盛時代のような音響機器メーカーも今は数少なく、量産品ばかりが目立つ中で、音や音楽の作り手の方々は、最新設備のスタジオや機器を使用しながら想いを込めて音作りをされていると思います。そうして製作された音源に入っている本来の音を再生する為には、まずは音の出口、すなわちスピーカーだと私は思うのです。当然、アンプやデッキなど 周りの機器も関係してきますが、第一はスピーカーだと思いました。

金属加工業という仕事をしながら音楽好きの私自身、以前から「なぜ、金属製のスピーカーが、あまり出てこない、出回っていないのか?」と思っておりました。楽器などに金属が多く使われている様に、音を再生する、すなわち音を出すと言う事から「金属でスピーカーを作ったらきっと良い音色 が鳴るはずだ。」と思ったのです。発想は単純だったかもしれませんが、「ものづくり企業として、技術と経験を生かして金属製スピーカーを作れないものか」と言う事からスピーカー作りが始まったのです。

まず始めに、デザインを考えたときに、現在の住宅事情や、設置の手軽さなどから「コンパクトで手入れもしやすくなければならない。」という課題がありました。 そのため、素材には高級素材のアルミニウムとステンレスを使用しスピーカーユニットには、10センチと8センチの2種類のフルレンジを採用する事にしました。

素材にアルミとステンレスを選んだのは耐食性にも優れ重量感もあり金属の中でも適度な粘りがあるということと、さらに異種金属を組み合わせることにより共振を抑制するという効果があることです。又、ステンレス部には、存在感を出す様に光沢のある硬質クロームメッキを施しました。この処理は、傷がつ きにくいのも良いところです。アルミ部には、カラフルな色が出せ剥げにくい という特徴があるアルマイト処理を施しております。

フルレンジを選んだ理由は、単にコンパクトという事だけではなく、低域から高域まで継ぎ目なく1つのスピーカーで出せるという魅力があるからでした。 もともと、私は金属加工の職人として長年やってきましたので、デザインや、オーディオのプロでは有りません。しかし、今までいろんな工業部品を作り又 見てきました。そんな中で、音の広がりや、スタイルを自分なりに考えデザイン しました。そうしてデザインや構想は完成いたしましたが、あくまでも外観の話です。もちろんその形でスピーカーという物は出来ますが、そんな単純なものではあ りませんでした。

それからは、目に見えない音の世界の奥深さを痛感することになりました。ス ピーカー内部に発生する定在波や音圧によるビビリや振動、部品一つ一つ何度も機械加工で新たに作り試作が出来ればそれを夜、工場の機械が止まって静かになってから試聴するという事が3年つづきました。 そんな中、試行錯誤の末、やっと第一号機が完成しました、そして沢山の方々に聞いて頂きスピーカーとして一定の評価も頂きましたが、問題点など厳しい意見も頂きました。

 「収録されている本来の音が出ているんだろうか?」それを課題とし、いろいろなご意見を糧に改良の日々が続きました。 たとえば、ギターなどの弦楽器は弦をはじくリアルな振動感、ドラムのシンバルとスティックの接触する音、オーケストラの一人一人の楽器の音の輪郭、ボ ーカルの臨場感、全体的な音のバランスや広がり、それらは満足に再現できているのか、多くの金属楽器が有るように金属製にしか出せない音の表現が出来るはずだという思いで開発は続きました。

そしてこの度、オール金属製スピーカー「omoi(想い)」を発売させて頂 くことになりました。

「omoi」とは、作者やアーティストの音楽作品にこめられた「想い」という意味です。その「想い」が多くの人に伝えられるitemになれば、と願っております。 以上、長々とお付き合い頂きましてありがとう御座いました。

株式会社サン精工 代表取締役 中尾 弘史

  1. ホーム
  2. 「Omoi」のはなし
  3. 「Omoi」はこうして生まれた
ページの先頭へ